米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)と連邦準備制度は、クロスボーダー暗号送金の報告・記録保持閾値を $3,000 から $250 に下げる 2020 年の規則案を撤回したと発表した。共同通知は 2026 年 11 月 9 日に発効し、銀行やその他の対象金融機関(暗号取引所やカストディアンを含む)が扱う国際送金について、従来通り $3,000 の上限を維持する。

2020 年提案の背景

2020 年 10 月に公表された元の改正案は、銀行秘密法(BSA)のトラベルルールを、法定通貨的特性を持つ変換可能な仮想通貨やデジタル資産にも適用しようとした。草案では、$250 以上の国際送金について送金者と受取人の身元情報を収集・保存することが求められ、従来の法定通貨送金に適用されていた $3,000 の閾値から大幅に厳格化されるものだった。この提案は、暗号取引をマネーロンダリング防止(AML)監視下に置くことを目的としていたが、広範な公的意見も集めた。

業界の反応と公的コメント

規則策定プロセス中に約 3,000 件のコメントが提出された。DeFi Education Fund や Blockchain Association などの批判者は、低い閾値が小規模暗号事業者に過度なコンプライアンスコストを課し、プライバシー懸念を生むと警告した。DeFi Education Fund の政策リーダー Gavin Zavatone は、比較的少額のブロックチェーン送金で氏名・住所・口座情報の開示を求めることは、不要なデータ収集リスクを招くと主張した。また、第四修正権に関する懸念も提起され、期待される AML 効果が拡大されたデータ収集義務に見合うかが問われた。

撤回の理由と今後の見通し

FinCEN と連邦準備制度は、2020 年以降のデジタル資産エコシステムと規制環境の大幅な変化を撤回の主な理由とした。両機関は、特に最近のステーブルコイン法案や連邦レベルのデジタル資産政策議論を踏まえ、別途の規則策定でトラベルルールを再検討する可能性を残した。将来の提案は新たな公的コメント期間を設け、以前のプロセスで提起された懸念に対応できるようにする旨を示した。

次に注目すべき点

関係者は、FinCEN が AML 目的とプライバシー・コストのバランスを取る新たな規則策定を開始するかどうかを注視するだろう。韓国が国内閾値を撤廃したことなど、他国の動向も米国政策に影響を与える可能性がある。さらに、今後のステーブルコイン規制枠組みが暗号資産へのトラベルルール適用の刷新を促すかどうかも注目される。